「社会へより強い影響力を」
       参人芝居主宰 やのひでのり

 先日、劇団の何人かと集まって演劇論のようなことを語るはめになった。私は演劇論を語る人種がとても苦手である。なぜならば、論じる暇があったら、体を動かして稽古に励むなり、実際に形にして表現をする時間に当てるべきだと思うからである。場末の飲み屋でいくら演劇の理想や愚痴をこぼしても時間の無駄だと思うのだ。論じるのは評論家の仕事だ。我々の仕事ではない。で、いつも演劇論が始まるとすぐに席を立ってしまうのだが、その時は劇団の予算や今後の方針を決める会議を兼ねていたので逃げ出すわけにも行かず、まじめに語ることになった。
 皆の愚痴(嘆き)をまとめてみるとこういうことになる。「俺たちはこれだけ一生懸命演劇に打ち込んできた。でも、こんなに命を注いでいるのにもかかわらず社会に対する影響というのは、こんなちっぽけなものでしかない! 俺達はこの10数年なにをやってきたのか!」悲痛の叫びだ。私も同感だった。 私を含め私たち参人芝居のメンバーはエンターテイメントで演劇活動をやっている者はいない。これは政治だ。社会に対する挑戦なのだ。絶対に負けるわけにはいかないのだ。不言実行。私はよりいっそう強い意志で演劇活動を続けることを誓ったのだった。