テアトロ2000年1月号73頁  佐藤康平
バーチャルな幸福感を求めたら・・・(抜粋)

先日「これはお芝居とは思われない」とある芝居の評で悪態をつき(資料の膨大さに負けそこに登場する人間を描くのを忘れていたので)失礼したが、その反対の例を見た。
参人芝居1999秋公演「カゾクゲーム」作・やのひでのり 演出・山口あきら。
幸福感をもとめて(幸福ではなく)奇妙な旅をする二人。達男(山下達彦)と情況を操作し心を操ることのできるナビゲーター(木原吉彦・好演)が目的地に向かっている。傍らにいる女たち、良江(保科みゆき)、綾子・香織(2役で橘理恵、好演)カゾクの楽しかるべきイベントや友人の力づけの言葉すべてを受け付けず、乗り物はゲームオーバーへ向けて突き進む。どうやっても達男の願う幸福感はバーチャル化できぬことがわかる。家族の幸福とはなんだろう!
 多彩な才能を認められて、新人賞などにノミネートされている作家らしく光ったものが見られる。他の多くの作品や映像まで参考にしているが、オリジナルの匂いを待ちたい。